ロシアのフィギュアスケート選手・アデリア・ペトロシアンはなぜミラノ五輪に出場できるのか?中立選手(AIN)とはどういう基準で選ばれるかを詳しく解説していきます。
テレビでアデリア・ペトロシアン選手の演技を見て、「あれ?ロシアの選手は出場禁止じゃなかったの?」と驚かれた方も多いのではないでしょうか。

私も最初は「え、なんで?」って混乱しました。
実はペトロシアン選手、国を代表してではなく、「中立選手」という特別な枠組みで厳しい審査をパスして出場しているんです。
なぜアデリア・ペトロシアン選手だけがミラノ五輪に出場できたのか、中立選手とはなんなのか、その複雑な事情を少しだけひもといてみましょう。
きっと疑問がすっきり晴れるはずですよ。
アデリア・ペトロシアンはミラノ五輪になぜ出場できる?
「ロシアは全員出場禁止」というイメージが強い中、なぜアデリア・ペトロシアン選手がリンクに立っているのでしょうか。
実は、ここには非常に狭き門と、ペトロシアン選手自身の圧倒的な実力が関係しています。
まずは、ペトロシアン選手がどうやってそのたった一つのチャンスを掴んだのかを見ていきましょう。
ロシア女子の出場枠「1」の理由
かつてフィギュアスケート大国として、1つの大会に3名の選手を送り込んでいたロシアですが、今回のミラノ五輪では状況が全く異なります。
結論からお伝えすると、今回のロシア勢(正確には中立選手)に与えられた女子シングルの枠は、たった「1つ」しかありません。

ウクライナ侵攻による制裁の影響で、正規のルートでの出場枠の枠取りができなかったからなんです。
通常、オリンピックの前年に行われる世界選手権の結果で各国の出場枠が決まるのですが、ロシアは参加すら許されませんでした。
そのため、2025年9月に北京で行われた最終予選「Skate to Milano」が、ロシアの女子選手たちに残された唯一のチャンスだったのです。
この大会は、まさに「蜘蛛の糸」のようなものでした。
「Skate to Milano」で優勝した選手が所属するカテゴリーにだけ、特別に1枠が与えられるという厳しい条件だったんですね。
つまり、以前のように「ロシア女子が表彰台を独占」という光景は、ルールの仕組み上、今回は見られないことになります。
少し寂しい気もしますが、これが今の国際社会が示した厳格なルールなのです。
ペトロシアンがミラノ五輪に選ばれた理由
では、なぜその貴重な1枠に選ばれたのがアデリア・ペトロシアン選手だったのでしょうか。
最大の理由は、ペトロシアン選手が北京での最終予選「Skate to Milano」で圧倒的な優勝を果たし、自らの手でその権利を確定させたからです。
ペトロシアン選手はショートプログラムでマイケル・ジャクソンの曲に乗り、フリーでは情熱的なタンゴを披露して、合計209.63点という高得点を叩き出しました。
また、年齢制限の壁をクリアしていたことも大きな要因です。

北京オリンピックでのカミラ・ワリエワ選手のドーピング問題を受けて、シニア大会に出場できる年齢が17歳以上に引き上げられまし。
ペトロシアン選手は2026年2月の時点で18歳。出場年齢に達しているのも五輪出場を決めた大きなポイントですね。
さらに、ペトロシアン選手は現役ロシア女子選手で唯一といっていいほど、複数の4回転ジャンプを操る「異次元の技術」を持っています。
ロシア国内の大会では260点台という驚異的なスコアを出したこともあります。
国際大会では審判の目が厳しくなり点数は伸び悩みましたが、それでも他を寄せ付けない実力があったからこそ、この切符を掴み取れたのですね。
オリンピックの中立選手(AIN)とは?
「中立選手」や「AIN」という言葉、ニュースで耳にしても少し分かりにくいですよね。
これは簡単に言うと、「国の看板を背負わずに個人として参加するアスリート」のことです。
具体的にどんな制限があるのか、一緒に確認していきましょう。
ロシア選手が中立選手になるための条件
中立選手(AIN:Individual Neutral Athletes)として出場するためには、私たちが想像する以上に厳しい条件が課されています。
一番のポイントは、「ロシアという国を連想させるものを一切排除すること」です。
会場でロシア国旗を振ることも、金メダルを獲ってロシア国歌を流すことも許されません。
代わりに、IOCが指定した青緑色(ティール色)の旗が使われ、歌詞のない短い曲が流されます。
表にまとめたのがコチラ▼
| 通常のロシア代表 | 今回の中立選手 (AIN) | |
| 国旗 | ロシア国旗を使用 | 使用禁止(大会指定の旗) |
| 国歌 | ロシア国歌を演奏 | 演奏禁止(歌詞なしの曲) |
| ユニフォーム | 国旗や国章入り | 国を連想させる色・柄は禁止 |
| 開会式 | 自国選手団として行進 | パレード参加禁止 |
| メダル記録 | 国別ランキングに加算 | 個人の記録としてのみ扱う |
こうして見ると、徹底して「国」の色を消されているのが分かりますね。
ロシア選手たちは開会式のパレードにも参加できません。
「自分は何のために戦っているんだろう」と、孤独を感じる瞬間があるかもしれませんね。
それでも出場を選んだ彼女たちの覚悟が、ここにはあるのです。
どんな審査が行われた?
「条件は分かったけれど、誰がどうやって決めているの?」という疑問も湧いてきますよね。
実は、出場にはISU(国際スケート連盟)による非常に厳格な「身体検査」のような審査が必要でした。
この審査で最も重視されたのは、「軍や戦争との関わりがないか」という点です。

ロシアではスポーツクラブが軍隊や治安機関と結びついていることが多いのですが、そうした組織と契約している選手は一発でアウトとなるんです。
実際、ペアやアイスダンスの有力選手たちが、この「軍との関連」を理由に審査に落ちてしまい、出場枠すら取れませんでした。
また、SNSの投稿も徹底的にチェックされました。
過去に戦争を支持するような発言をしていないか、軍を称賛する「いいね」をしていないかなど、2022年以降の行動がすべて洗われました。
ウクライナ側からは「ペトロシアンも完全にシロではない」という抗議の声もありましたが、最終的にISUのパネルはペトロシアン選手の出場を承認しました。
さらに、ドーピング検査も桁違いに厳しくなっています。

ロシア国外の検査機関による監視を受け、クリーンであることを証明し続けなければなりません。
これほど厳しいハードルを越えてきたからこそ、アデリア・ペトロシアン選手は今、ミラノの氷の上に立てるのです。
ISU(国際スケート連盟)のロシア制裁の解除はいつになる?
今回のミラノ五輪は特例のような形ですが、「じゃあ、いつになったら元通りになるの?」と気になっている方も多いと思います。
今後の見通しについて、少し触れておきましょう。
現状では、ロシアへの制裁が完全に解除され、国旗を掲げて復帰できる時期はまだ「未定」です。
ウクライナでの戦争が続いている限り、シニアのトップ選手が国を背負って戦うことは難しいというのが、国際的な共通認識のようです。

ただ、少しずつ「変わっていくのかな?」という兆しも見えてきています。
ISUは、政治的な責任が薄い「ジュニア世代」から先に復帰させることを検討し始めています。
早ければ2026/2027シーズンから、若い選手たちが国際大会に戻ってくる可能性があるそうです。
一方で、ミラノ五輪でロシアのシニア選手が中立選手としてどのような振る舞いをするかが注目されています。

ミラノ五輪での振る舞いが、ロシア選手たちのISU復帰の是非を決める判断材料となる、とも言われているからなんです。
もし政治的なアピールがあれば、ISUの態度はまた硬化するでしょう。
今回のペトロシアン選手の出場は、単なる競技の結果だけでなく、フィギュアスケート界の未来を占う「試金石」にもなっているんですね。
まとめ
ここまで、アデリア・ペトロシアン選手がなぜミラノ五輪に出場できるのか、その背景を見てきました。
ペトロシアン選手が出場できるのは、
でした。
国旗も国歌もない孤独な戦いの中で、ペトロシアン選手が見せる演技はどのようなものになるのでしょうか。
複雑な国際情勢や、「なぜ?」という思いを抱くのはとても自然なことです。
それでも、鍛え抜かれた技術と表現力そのものには、国境はありません。
ミラノ五輪では、政治的な背景を少しだけ頭の片隅に置きつつ、一人の若いアスリートが氷の上で紡ぎ出す「瞬間」に注目してみてはいかがでしょうか。
そこにはきっと、言葉を超えたドラマがあるはずです。


